2020年度下半期論文ハイライトpart4

投稿者: 前田恵理子 / 投稿日: 2021年04月14日
2020年1‐3月に東大放射線科の医局員が筆頭著者となり、アクセプトされた論文からハイライトをご紹介いたします。第2弾は、中尾貴祐先生、三木聡一郎先生、八坂耕一郎先生、雨宮史織先生に、最新のAI研究4論文のご紹介と、ひとことメッセージをいただきました。

中尾貴祐先生(コンピュータ画像診断学/予防医学寄付講座 特任助教)

中尾先生:2020年度下半期論文ハイライト画像

Nakao T, Hanaoka S, Nomura Y, Murata M, Takenaga T, Miki S, Watadani T, Yoshikawa T, Hayashi N, Abe O. Unsupervised Deep Anomaly Detection in Chest Radiographs. J Digit Imaging. 2021 Feb 8. doi: 10.1007/s10278-020-00413-2

内容紹介

深層学習による胸部X線写真の病変検出です。 正常症例のみを学習に使っているのが特徴で、以下のような利点があります。

ひとこと

COVID-19のせいか査読に時間がかかったり、その他諸々あって初投稿から1年半くらいかかってしまいましたが、なんとか掲載にたどり着けてよかったです。

三木聡一郎先生(コンピュータ画像診断学/予防医学寄付講座 特任助教)

Miki S, Nakao T, Nomura Y, Okimoto N, Nyunoya K, Nakamura Y, Kurokawa R, Amemiya S, Yoshikawa T, Hanaoka S, Hayashi N, Abe O. Computer-aided detection of cerebral aneurysms with magnetic resonance angiography: usefulness of volume rendering to display lesion candidates. Jpn J Radiol. 2021 Feb 27. doi: 10.1007/s11604-021-01099-4

内容紹介

脳動脈瘤のコンピュータ自動検出(今風に言うとAI診断)における、最適な病変候補の提示方法に関する研究です。全く同じ自動検出アルゴリズムを用いても、候補を単にMRA軸位断で提示する場合とボリュームレンダリングで提示する場合とでは、放射線科医が病変の存在に気付く割合がかなり違うということを読影実験で示しました。Deep Learningの発達により、一部の病変の検出においてはアルゴリズム自体の性能が人間を凌駕し飽和しつつある一方で、結果を人にどう見せ、どう使わせるかといった部分では、まだ改善の余地がある、ということです。

ひとこと

「AIの性能が人間の読影医を凌駕した」みたいなニュースが時々聞かれる時代になりましたが、それはまだ「英文スペルチェッカが人間よりスペルミスの検出で正確だった」のようなレベルの話に過ぎませんし、画像や依頼から「文脈」を読み取って「理解」できるという人間の優位性はまだ失われていません。AI診断を人間がどのように活用すべきかは、これからますます問われていくと思います。画像情報処理・解析研究室のメンバーとして、この分野での今後も探求を続けていければと考えています。

八坂耕一郎先生(東大放射線科 助教)

八坂耕一郎先生:2020年度下半期論文ハイライト図

Yasaka K, Kamagata K, Ogawa T, Hatano T, Takeshige-Amano H, Ogaki K, Andica C, Akai H, Kunimatsu A, Uchida W, Hattori N, Aoki S, Abe O. Parkinson's disease: deep learning with a parameter-weighted structural connectome matrix for diagnosis and neural circuit disorder investigation. Neuroradiology. 2021 Jan 22. doi: 10.1007/s00234-021-02648-4

内容紹介

頭部MRI撮影データから得られるコネクトーム行列を用いて、Parkinson病の診断を行う深層学習モデルを作成しました。また、Grad-CAMの技術を学習済み深層学習モデルへと適用することで、Parkinson病の診断を行う上で重要な神経回路接続についても評価しました。

ひとこと

研究結果を論文として残すまでに、多くの方々のご協力をいただきました。この場をお借りして、御礼を申し上げます。

雨宮史織先生(東大放射線科 特任講師)

雨宮史織先生の2020年度下半期論文ハイライト画像

Amemiya S, Takao H, Kato S, Yamashita H, Sakamoto N, Abe O. Automatic detection of brain metastases on contrast-enhanced CT with deep-learning feature-fused single-shot detectors. Eur J Radiol. 2021 Mar;136:109577. doi: 10.1016/j.ejrad.2021.109577

内容紹介

昨年より大学院生と一緒に行う研究課題として、深層学習による脳転移自動検出器の作成を行っています。物体検出に特化したsingle-shot multi-box detector (SSD)というアルゴリズムを応用し、まずは造影CTでの脳転移検出を試みました。脳転移スクリーニングは感度から造影MRIが推奨され、過去の自動検出器の報告もMRIデータを扱うものに限られます。しかしながら実際にはMRI検査のアクセシビリティに限りがあるため、被曝に抵抗の強いヨーロッパでも未だ造影CTスクリーニングが50%を占めます。本研究の技術的な点としては、SSDが苦手とする小病変の検出成績向上の為、スケールの小さい情報を持つ複数層の特徴を融合して入力する選択的モデル構築の改変により、小病変検出能を、全体の偽陽性率を保ったまま改善出来ることを示しました。アノテーション作業の効率化のために、高尾先生に専用ソフトを作っていただき、このソフトを使用して加藤・山下・坂本先生が、病変を囲んでくれました。良いモデルを作るためには正解の精度が重要と、3人で工夫しながら頑張ってくれました。

ひとこと

深層学習、物体検出いずれも専門外なので学ぶことが多かったです。続きの実験も頑張ります。