European Congress of Radiology 2021受賞報告

投稿者: 雨宮史織 / 投稿日: 2021年03月10日
2021年3月3日~7日にWeb開催されたヨーロッパ放射線学会(European Congress of Radiology 2021; ECR2021)にて、特任講師の雨宮史織先生がCum Laude賞を受賞されました。

受賞論文 雨宮史織先生(東大放射線科 特任講師)

Origin of the Time Lag Phenomenon and the Global Signal in Resting-State fMRI. Amemiya S, Takao H, Abe O. Front Neurosci. 2020 Oct 29;14:596084. doi: 10.3389/fnins.2020.596084.

雨宮先生ECR2021受賞論文です

内容紹介

私は、fMRIの技術的問題点を解決し、脳の大域的情報動態解析を可能とすることを目指しています。これを実現するには計測されるfMRI信号の時間差から脳神経活動の時間差を分離する必要がありますが、fMRIが間接的計測法であるため一筋縄にはいきません。そこで私は、信号成分の由来を検討する研究を重ねながら進めています。本報告では、ヒト安静時fMRIにおける全脳広汎性の信号とresting state networksと呼ばれる大域的ネットワークのそれぞれの信号の成因と信号時間差の由来を調べています。実験1ではhuman connectome projectという大規模公開データに時間的独立成分分析を使用することで、複数の広汎性信号の分離を行い安静時fMRI信号の特徴を調べました。実験2では脳の広範囲の神経細胞を同時刺激するために広域視覚刺激装置を作成し、信号時間差を計測しました。また、同一被検者から安静時fMRIデータも取得し、頭蓋外動脈信号と広汎性信号の関係も調べました。これらのデータを統合的に比較検証し、信号時間差の時空間パターンが信号由来が①刺激誘発性神経活動、②自発性神経活動、③その他の生理現象のいずれであっても高度に一致することを示し、信号時間差が血行動態応答関数の違いを表していることを明らかにすることが出来ました。これらの結果から、神経活動の情報動態解析をする上で血行動態応答関数の時間差を考慮する必要があること、全脳広汎性信号が、頭蓋内外広域でほぼ同期した生理的な血流・血圧変化を反映すると考えられることを示しました。

雨宮先生、受賞おめでとうございます!