第9回おイネ賞受賞報告

投稿者: 前田恵理子 / 投稿日: 2021年12月01日
本ブログを担当している前田恵理子が、日本医師会の推薦により愛媛県西予市から「第 9回おイネ賞全国奨励賞」を受賞しました。楠本イネはシーボルトの娘として出島に生 まれ、西予に移り住んで日本で最初の女性産婦人科医として活躍しました。その名を冠 した女性医師の活躍顕彰となっています。
前田恵理子

西予市と楠本イネ

愛媛県西予市は四国西岸の、宇和島の北にある自治体です。江戸時代には宇和島藩の宿場町として栄えたため、現在でも中心部にはJR四国の予讃線「卯之町駅」があり、その周囲は歴史的景観が残り賑わっているそうです。また、地質学的には日本列島の形成過程で様々な年代の付加体が凝縮して見られる点で大変興味深く、日本ジオパーク(四国西予ジオパーク)にも認定されています。

おイネさん、こと楠本イネは、オランダから出島に渡ったドイツ人医師、シーボルトの娘です。シーボルトは、日本地図や日本に関する多くの蘭訳書を持ち出そうとしたことが発覚し、イネが2歳のときに国外追放となります。イネは西予に渡ってシーボルト門下の医師らから医学や産科学を学び、日本初の女性産婦人科医として活躍しました。大変腕の良い医師であったそうで、その後東京築地で開業した際には宮内庁御用達にもなっています。困難な道を経ながらも人並みならぬ努力で医師として大成したおイネさんの人生は、現代に生きる多くの女性医師にも勇気を与えてくれます。

おイネ賞

おイネ賞は、愛媛県内外で活躍する女性医師および医学生に対する表彰で、全国奨励賞、地域奨励賞、医学生奨励賞に対して毎年1名ずつが推薦されています。全国奨励賞は日本医師会の男女共同参画委員会により推薦され、2019年までは西予市にて華やかな授賞式が開催されていました。新型コロナのため、去年はおイネ賞自体が中止、今年は授賞式なしのプレスリリースのみになってしまいました。

ひとこと

大変名誉な賞を頂き、驚くと同時にこれまでの歩みを支えて下さった多くの方に感謝しております。今回受賞に至ったのは、私が専門とする小児心臓CTの低線量撮像や線量適正化、また国内外のガイドライン作成を通じた標準化、また大学における多くの若手・大学院生の指導といった仕事をご評価いただいてのことと伺っております。

また、日本医師会の推薦状の中では、私自身が重症喘息や肺癌の6回の再発を克服しながらのキャリア形成を、著書「Passion 受難を情熱に変えて(part 1 & 2)」として上梓し、多くのがん患者さんに勇気を与えたことにも触れて下さりました。

今後は引き続き、小児を中心とするCT被ばくの正当化・最適化・標準化に尽力したいと思います。また、がん患者かつ放射線科医として、4回の手術と3回の化学療法のみならず、多くの画像診断、CVポート留置、2回の放射線治療、肺RFAや、左後頭葉切除と放射線治療に端を発した放射線脳壊死、視覚障害・探索障害・言語障害を乗り越えてきた当事者の目線で、医療と患者の力になる発信を続けていきたいと思います。さらに今後は、子育て経験と患者経験を活かし、女性やハンデのある医師・医学生の支援にも取り組んでいきたいと思います。