阿部修教授インタビュー part 3

投稿者: 久保貴俊 / 投稿日: 2021年01月20日
東大放射線科教授を務められている阿部修先生。パート1では、阿部先生のご経歴、パート2では、東大放射線科の医局運営について伺いました。パート3では、放射線科の将来性について伺います。

放射線科の将来性

――最後に放射線科の将来性について、先生のお考えを伺いたいと思います。まず、最近話題の人工知能(artificial intelligence:AI)が放射線科に与える影響について教えていただけますでしょうか。

阿部:まず、画像診断でAIが放射線科医を完全にリプレイスすることは現実的には無理だと思っています。画像診断は、様々な臓器や構造を認識し、その中から異常を拾い上げた上で、診断を行うという、非常に複雑なプロセスを踏んでいるためです。ただ、肺結節や動脈瘤のピックアップなどのシンプルな画像診断のサポート機能としては、放射線科医の役に立っていくのではないかと思います。一方、研究面ではAIは発展が非常に望まれており、かつ大変面白い分野です。東大の診断部では寄附講座も含めてAI研究にはかなり力を入れています。

「画像診断でAIが放射線科医を完全にリプレイスすることは現実的には無理」と阿部先生

――治療への影響はどうでしょうか。

阿部:AIによるコンツールリング(放射線治療計画の囲みのこと)などが実用化されることで業務は楽になると思いますが、こちらもAIが完全に臨床をリプレイスすることは不可能だと思っています。

コロナ時代の放射線科

新型コロナウイルス流行の前から、放射線科医は遠隔読影などのIT化が盛んでした。

――次にwithコロナ時代の放射線科のあり方について教えていただけますでしょうか。遠隔医療が導入しやすいのは放射線科のメリットのようにも思いますが。

阿部:実は新型コロナウイルス流行の前から、画像診断の管理加算要件として「画像診断を担当する医師は週3日以上かつ22時間以上常勤として病院勤務を行えば、残り時間は遠隔読影でも加算を取れる」というものが定められています。そのため管理加算をとっているような施設でも、すでに遠隔画像診断の導入は可能です。ただ、現実的には検査のクオリティコントロールや他科との関わりなどの面において、しっかりと施設勤務することのメリットの方がまだまだあると思っています。もちろん放射線科領域は遠隔医療のポテンシャルが高い領域ですので、今後は遠隔医療にシフトしていく可能性は十分あるとも思っています。

――その他、放射線科の今後について何か先生のお考えはありますでしょうか。

阿部:現実的な問題として、新専門医制度のシーリングシステムにより東京都の放射線科医の人数は今後減っていきます。2018年度50人だったのが、今年度は43人まで減らされました。人数が減っていくことによって、今後、画像診断・放射線治療いずれの領域でも病院の選択と集中が進んでいくかもしれません。

――ありがとうございます。最後に先生が今興味をもたれている研究領域を一つ教えていただけますでしょうか。

阿部:北海道大学などから報告されているO-17標識水を使ったイメージングについては興味を持っています。従来の造影剤とは違い水そのものなので、これまで見えてこなかった実際の水の挙動が可視化できる、画期的なMRI用外因性トレーサーだと感じています。

――とても面白そうな分野ですね! このあと文献などあたらせていただきたいと思います。本日は長い時間インタビューにお答えいただきありがとうございました。先生ご自身のことや医局について様々なことを知ることができ、大変有意義なインタビューになったと思っております。本当にありがとうございました。

阿部:こちらこそありがとうございました。

長時間のインタビューにご協力いただいた阿部教授、久保先生、金丸先生、森島先生、お疲れさまでした。(こちらも呼吸止めでの撮影!)