2021年度下半期論文ハイライト part 3

投稿者: 前田恵理子 / 投稿日: 2022年01月29日
2021年10-12月に東大放射線科の医局員が筆頭著者となり、アクセプトされた13論文からハイライトをご紹介いたします。第三弾は、初めてのfull paperが掲載された坂本直也先生、初めてのcase reportが掲載された神尾諭先生、そして千葉大学でも大活躍、野村行弘先生(コンピュータ画像診断学/予防医学寄付講座前・特任講師)です。

坂本直也 先生

東京大学医学部附属病院(大学院生) 医師6年目、放射線科4年

Sakamoto N, Kurokawa R, Watadani T, Morikawa T, Nakaya M, Cho S, Fujita N, Kamio S, Koyama H, Suzuki S, Yamada H, Abe O, Gonoi W. Differential diagnosis of thymic epithelial neoplasms on computed tomography using the diameter of the thymic vein. Medicine (Baltimore). 2021 Nov 19;100(46):e27942. doi: 10.1097/MD.0000000000027942.

Medicine誌に掲載された坂本直也先生の論文

論文紹介

胸腺腫瘍の組織型ごとに胸腺静脈径の変化を調べた研究です。胸腺癌12例、胸腺腫34例、胸腺嚢胞17例の胸腺静脈径を測定し、腫瘍の形状や輪郭、内部の性状といった項目も交えて合わせて評価しました。他の組織型よりも胸腺癌では、胸腺静脈径が有意に大きいことがわかりました。また腫瘍の他の特徴と比較しても、2mm以上の胸腺静脈径を持つことは、胸腺癌とよく相関していました。

ひとこと

初めて筆頭著者としてacceptされた論文です。時間がかかってしまいましたが、黒川先生・五ノ井先生に粘り強く御指導いただき、大変感謝しております。自分の努力した成果が出版という形になり、感慨深かったです。今後も良いものを出せるよう努力していきます。

神尾諭 先生 

NTT東日本関東病院放射線科専攻医 医師5年目、放射線科医3年目

Kamio S, Kubo T, Koshino S, Abe O. Successful transcatheter arterial embolization for pseudoaneurysm of the deep femoral artery in a patient with presumptive ACTA2-related vasculopathy. Radiol Case Rep. 2021 Oct 1;16(12):3652-3654. doi: 10.1016/j.radcr.2021.09.007

Radiology Case Reprorts誌に掲載された神尾諭先生の論文

論文紹介

ACTA2は平滑筋細胞のαアクチンをコードする遺伝子で、ACTA2遺伝子変異は大動脈瘤、大動脈解離などの血管疾患の原因となることが知られています。本例は、誘因なく短期間で発生した深大腿動脈の仮性動脈瘤に対して経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を施行した症例です。患者に大動脈疾患既往及びACTA2遺伝子変異の家族歴があったため、ACTA2遺伝子変異の関与が疑われました。ACTA2遺伝子変異による四肢動脈病変は稀であるため今回報告しました。

ひとこと

私は初めての論文執筆であり、書き方、投稿の仕方などわからないことだらけでしたが、久保貴俊先生、越野沙織先生らに熱心な論文指導をしていただいたおかげで投稿、アクセプトにこぎつけることができました。この場をお借りして御礼を申し上げます。

野村行弘 先生

千葉大学フロンティア医工学センター 東京大学医学部附属病院コンピュータ画像診断学/予防医学講座(非常勤)

Nomura Y, Hanaoka S, Takenaga T, Nakao T, Shibata H, Miki S, Yoshikawa T, Watadani T, Hayashi N, Abe O. Preliminary study of generalized semiautomatic segmentation for 3D voxel labeling of lesions based on deep learning. Int J Comput Assist Radiol Surg. 2021 Nov;16(11):1901-1913. doi: 10.1007/s11548-021-02504-z

Int J Comput Assist Radiol Surg.誌に2021年11月に掲載された野村先生の論文

論文紹介

コンピュータ支援検出(CAD)の開発においてアノテーション作業は労力を伴うため、負担軽減が望まれています。ディープラーニングを使った補助ツール開発の初期段階として、アノテーション対象の病変のデータを一切学習せずに半自動の領域抽出ができるかを検討しました。提案手法ではディープラーニングの学習の際に白黒反転を含む10種類の変換によるデータ拡張を行うことで汎用性を高めました。周囲とのコントラストが異なる3種類の病変で評価した結果、未知の種類の病変形状を良好に抽出することができました。画像は肺結節(胸部CT)と肝結節性病変(EOB-DTPA造影MR画像肝細胞相)で学習したものを転移性脳腫瘍(造影MR)に適用した場合の結果です。

ひとこと

アノテーションを含めたデータ収集はAIの研究を始める上で重要であり、検討の余地がまだあります。異動後も引き続き東大病院の先生方と連携して様々な知見について発表していければと思います。