訃報 前田恵理子先生

投稿者: 阿部修 / 投稿日: 2022年02月11日
当院放射線科医の前田恵理子先生が2月8日にご逝去されました。

前田恵理子先生を偲んで

2022年2月8日、前田先生急逝の報に接した私は大きな衝撃を受け、信じられない気持ちで一杯でした。

前田先生は2003年に東京大学医学部医学科を卒業され、直ちに東京大学医学部附属病院放射線科研修医として研修を始められました。2年後の2005年より東京大学医学部附属病院22世紀医療センター コンピュータ画像診断学/予防医学寄付講座 特任助教に着任され、以来体幹部を中心とした画像診断のみならず、特に小児心臓CTにおける的確な検査遂行・診断や被ばく低減にご尽力なさり、日本国内のみならず海外の研究者との共同研究を推進し、優れた成果を挙げてこられました。当講座においても数多くのスタッフ・大学院生・研修医など分け隔て無く積極的に共同研究活動や指導を行い、数多くの卓越した研究成果発表や学位指導を行い、亡くなられる直前まで当講座の診療・研究の中心メンバーとして活躍していらっしゃいました。私自身逝去される前週にお目にかかり、いつもの元気なお姿を拝見したばかりでした。

重篤な喘息で幼少期から苦労されたこともあり医師の道を目指し、その夢を実現されました。入局後院内で車椅子で過ごされている時期もありましたが、近年それを克服し素敵なご家族との日常をSNSに披露されており、大変羨ましく感じておりました。しかし2015年に肺癌に罹患され、以来懸命に病魔と闘いながらも診療・研究・私生活に全力を傾け、周りの人々を元気づけ、鼓舞する前田先生には私自身心底敬服しており、当講座にとっても無くてはならない存在でありました。この間の経緯については著書「Passion(パッション)〜受難を情熱に変えて〜〈Part 1〉」「Passion(パッション)〜受難を情熱に変えて〜〈Part 2〉」として出版されておりますので、是非ご覧頂き前田先生の生き様を追体験し、彼女のパワーを感じていただければ幸いです。

2022年度から日本医学放射線学会の代議員に着任予定で、今後ますます学会活動にも力を注ぎ、日本の放射線医学の発展にご尽力頂けると期待しておりましたが、返す返すもその早すぎるご逝去は残念でならず、優れた人材を失った当講座や学会にとって大きな痛手であります。今後は医局員一同前田先生のご遺志を継ぎ、彼女が目指した理想の画像診断学・被ばく低減の発展に力を注いで参りたいと思います。

前田先生のご逝去を悼み、ここに心より哀悼の意を捧げます。

2022年2月10日 東京大学大学院医学系研究科放射線医学講座 阿部 修