第58回日本医学放射線学会秋季臨床大会受賞報告

投稿者: 中村優太, 三木聡一郎 / 投稿日: 2022年11月24日
第58回日本医学放射線学会秋季臨床大会にて、当教室大学院生の中村優太先生が一般演題・学術展示優秀演題賞を受賞されました。

中村優太,花岡昇平,野村行弘,片山僚,小西池真緒,越野沙織,菊地智博,中尾貴祐,三木聡一郎,渡谷岳行,吉川健啓,林直人,阿部修 深層学習による抽象型要約を用いた読影レポートimpressionの自動生成

中村優太先生

内容紹介

「読影レポート(画像診断報告書)の作成をAIに少し手伝わせたらどうなるか?」を検証した研究です。

読影レポートは,画像所見をくまなく記した「所見 (findings)」と結論部分の「診断 (impression)」の2パートからなります。普段はもちろん放射線科医がどちらも書いていますが、この研究では所見を人間が書いたところだけをAIに見せて診断を出力させ、その品質を評価しました。

品質は被験者5名が2段階で評価しました。元の読影レポートにありもしなかった内容が書かれては困るので、その場合は「矛盾あり」、そうでない場合は「矛盾なし」と判定しました。

結果、AIは86〜89%の症例で「矛盾なし」と判定される診断を出力できました。さすがに同条件で同じ作業をした人間の放射線科医には負けてしまいましたが、そこまで悪くはない結果となりました。

将来的には、AIにリアルタイムで診断案を生成してもらい、読影レポート作成時間の短縮につなげられればと考えています。

受賞スライドより抜粋

ひとこと

大変光栄な賞をいただいた研究ですが、私自身が工夫したり作ったりした部分はあまりなく、ほとんどはすでに無料で出回っているコードやモデルを組み合わせたものです。ここ数年は自然言語処理の技術の進歩が著しいので、発想次第でさまざまな応用ができるようになってきました。

もともと日本語読影レポートへの自然言語処理の応用は、当教室ご出身の小野木雄三先生(現・国際医療福祉大学)や医療情報部の先生方などが道筋をつけてくださった分野です。

最近、放射線科医が画像処理AIを手がける機会は増えましたが、日本語データでの自然言語処理AIの盛り上がりはまだこれからといった印象があります。

画像と違って、自然言語処理では日本語データで誰かが研究・開発しないと日本語での恩恵が得られにくく,手付かずの研究テーマも山ほど転がっています。この機会に自然言語処理に関心をもってくださる方が増えれば幸いです。