腹部放射線学会image interpretation受賞報告

投稿者: 渡谷岳行, 前田恵理子 / 投稿日: 2021年07月16日
渡谷岳行准教授が、2021年6月19-20日に開催された「第34回腹部放射線学会」のimage interpretationでただ一人、全問正解の第1位を受賞されました。AIフロントランナーインタビューでも大活躍頂いた渡谷先生は、入局1年目から腹部放射線学会の同クイズで受賞されるなど、非常に高い臨床力のある先生です。受賞の感想、若手向けの勉強の秘訣など、渡谷先生に伺いました。

(リード文・編集:前田恵理子)

渡谷先生が第34回腹部放射線学会image interpretationで第1位を受賞されました。写真は、新座志木中央病院放射線科の一色彩子先生のご厚意による。
AIフロントランナー座談会で発言される渡谷先生

受賞のご感想

腹部放射線学会のクイズ症例は入局以来ほぼ毎年挑戦している、個人的な夏の風物詩的チャレンジイベントになっています。これまで何度か入賞したことはあったのですが、さすがに日本中の猛者が集まるところなので、1位を頂いたのはキャリア20年にして今回で初めてです。なかなか頂けるものではないので素直に喜んでおきたいと思います。

授賞式では満点というご紹介を頂きましたが、実は後腹膜の髄外形質細胞腫の症例は腎盂癌が併存しているとは診断できず腎盂内病変も含めて形質細胞腫かな、と思っていました。まだまだわからないことは山ほどあるので一つずつ賢くなっていきたいと思います。

今回ラッキーだったのは、最後の後屈妊娠子宮嵌頓についてはちょうど腹部放射線学会の少し前に、子宮嵌頓かどうかということが臨床的に問題となった患者さんがいて、産科の先生方といろいろ調べ物をしながら議論を交わしたという経験があったことです。おかげでクイズ症例は見てすぐにピンときて正解することができました。今回受賞できたのは実臨床で患者さんのために頑張って勉強して診断したことへのご褒美のように感じています。

画像診断の勉強の仕方など若手へのアドバイス

勉強の仕方って人それぞれ向き不向きがあると思いますので、自分がどうしているかということのご紹介になってしまうのですが。私は教科書とか論文を順番に最初から最後まで読んで勉強するというやり方が本当に苦手で、頑張ってページをめくってもほとんど頭に入らなくて苦労しています。ですが実際の症例で「この患者さんはどうしてこんなに痛そうなんだろう?」と考えたり、同僚の先生と所見についてああでもないこうでもないと議論したり調べ物をしたことはかなりよく覚えています。学会のクイズ症例で正解するためにあの論文を読んでこう推測して答えたけど完全に的外れだった、という苦い思い出と共に論文の内容も記憶していたりします。自分がそういう性質だとわかってからは、いたずらに教科書を読むのではなく、わざわざそういったエピソード記憶が発生するように学会のクイズセッションに参加したり、カンファレンスで発言したり、同僚の先生に突撃して議論をふっかけたり(迷惑ですみません)してイベントの印象ごと勉強する機会を多く作るように心がけています。

若手の先生へのアドバイスをするとすれば、勉強というものはただただ苦労してつらい努力をすればいいというものではないということですね。自分の性格性質を省みたうえでどういう方法なら覚えられるか、どういう形ならモチベーションを向上させられるかということに合わせて、上手に自分の目の前にニンジンをぶら下げる工夫をこらしてみるといいんじゃないかな、と思います。