2021年度上半期論文ハイライト part3

投稿者: 前田恵理子 / 投稿日: 2021年07月14日
2021年4-6月に東大放射線科の医局員が筆頭著者となり、アクセプトされた論文からハイライトをご紹介いたします。第3弾は、初めて論文を書いた加藤伸平先生、貝梅正文先生、またコンピュータ画像診断学・予防医学講座のAI研究派である竹永智美さん、野村行弘先生によるAI研究を4本まとめてご紹介します。

加藤伸平先生

東大放射線科 大学院生

加藤伸平先生2021年6月ハイライト

Kato S, Amemiya S, Takao H, Yamashita H, Sakamoto N, Abe O. Automated detection of brain metastases on non-enhanced CT using single-shot detectors. Neuroradiology. 2021 Jun 10. doi: 10.1007/s00234-021-02743-6.

内容紹介

Deep learningを用いた単純CTでの脳転移検出です。モデルにはsingle-shot detector (SSD)という、物体検知の比較的新しいものを使いました。MRIにおける先行研究は複数あるのですが、単純CTというのがユニークな点です。当然感度は高くはないですが、SSDは病変自体は不明瞭でも浮腫をヒントにして検知していたり、人間に負けていないのではないかと思います。詳しくは読影実験で続報出来るかと思います。

ひとこと

雨宮先生をはじめ沢山の方々に御指導、御協力頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。引き続き頑張ります。

貝梅正文先生

東大放射線科 大学院生 卒後9年目、放射線科6年目

貝梅先生2021年6月ハイライト

Kaiume M, Suzuki S, Yasaka K, Sugawara H, Shen Y, Katada Y, Ishikawa T, Fukui R, Abe O. Rib fracture detection in computed tomography images using deep convolutional neural networks. Medicine (Baltimore). 2021 May 21;100(20):e26024. doi: 10.1097/MD.0000000000026024.

内容紹介

Deep learningを用いた肋骨骨折自動検出ソフトウェアの性能を検証し、医師の読影による検出能との比較を行った論文です。ソフトウェアの肋骨骨折検出性能は、画像診断を専門としない医師と比較して非劣勢(同等もしくはより良い)という結果となりました。

ひとこと

筆頭著者として初めて投稿した論文で、研究計画から執筆に至るまで多くの先生方に多大なお力添えを頂きました。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。

竹永智美 特任研究員

東京大学医学部附属病院コンピュータ画像診断学/予防医学講座 6年目

竹永さん2021年6月ハイライト

Takenaga T, Hanaoka S, Nomura Y, Nakao T, Shibata H, Miki S, Yoshikawa T, Hayashi N, Abe O. Multichannel three-dimensional fully convolutional residual network-based focal liver lesion detection and classification in Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI. Int J Comput Assist Radiol Surg. 2021 Jun 1. doi: 10.1007/s11548-021-02416-y.

内容紹介

Gd-EOB-DTPAで造影された5時相(造影前、動脈相、門脈相、静脈相、肝細胞相)のMR画像を入力とし、一つのニューラルネットワークで肝結節性病変の検出と分類を同時に行う手法を提案しました。

ひとこと

アウトプットのスピードを上げたいと思いながら、鈍行ですすんでおりますので、さらに精進したいです。

野村行弘先生

東京大学医学部附属病院コンピュータ画像診断学/予防医学講座(2021年6月30日まで)

野村行弘先生2021年6月ハイライト

Nomura Y, Hanaoka S, Nakao T, Hayashi N, Yoshikawa T, Miki S, Watadani T, Abe O. Performance changes due to differences in training data for cerebral aneurysm detection in head MR angiography images. Jpn J Radiol. 2021 Jun 14. doi: 10.1007/s11604-021-01153-1.

内容紹介

Radiologyの編集委員会より発表された人工知能 (AI) 研究の指針では、AIを使った医用画像処理を開発する際には複数施設のデータを使用することが推奨されています。しかし、調べた限りでは病変自動検出で学習データの収集する施設数の違いによる性能の違いについては検討がされていませんでした。そこで、MR画像を対象とした病変自動検出の中で最も研究が報告されている頭部MRA画像の脳動脈瘤検出を対象として、学習データを複数施設より収集すべきかどうかを調べました。イメージラボでこれまでに開発した3種類の脳動脈瘤検出ソフトウェアを使って調べた範囲では、学習データに含まれていない施設のデータに対する性能を確保するためには、複数施設より収集した学習データを使うことが望ましいことが示されました。

ひとこと

AIの研究はどうしても「○○を対象とした自動診断AIを新たに開発した」とか「性能の高い自動診断AIを開発した」といった研究の方が注目されてしまいがちです。しかし、AIの研究ではデータの集め方やアノテーション(正解入力)方法も重要な要素であり、検討の余地がまだあります。今後も様々な知見について発表していければと思います。