
学位研究の内容
乳腺粘液癌のサブタイプ分類とマンモグラフィ所見の対比を行いました。
現在の乳癌診療においては、病理診断よりもホルモンレセプターとHER2発現の組み合わせに基づいたサブタイプ分類が重視されています。なかでも予後・治療反応性に差があるHER2タイプを確実に診断することは重要です。病理組織を採取して初めてサブタイプ診断が可能になるわけですが、特に生検では腫瘍の不均一性を受けやすく、ときに誤ったサブタイプ分類を行う可能性があります。画像所見は腫瘍全体を反映してると考えられるため、画像から推測されるサブタイプと免疫染色から決定されたサブタイプが異なる場合には、診断を再考する機会を与えてくれることになります。このような背景から、特に乳癌の大部分を占める浸潤性乳管癌については、画像所見とサブタイプ分類の対比についての検討が進んでおります。しかし、まれな組織型である粘液癌についての報告はありませんでした。
今回の学位論文での検討の結果、粘液癌においてもまれながらもHER2陽性タイプが存在すること、その石灰化の性状はpleomorphic, linear, branchが多いこと、その分布は線条・区域性が多いことが示唆されました。この結果は、浸潤性乳管癌におけるHER2陽性タイプと同様の傾向であり、HER2タイプは組織型を問わず乳管内成分を反映した画像所見を呈することが示唆されます。
今後は、超音波検査と造影MRIについても検討予定です。
大学院4年間を振り返って、学んできたこと
臨床面では、診断専門医とIVR専門医を取得したことで、自分の判断・決定の重さを実感するようになったこと。日々精進です。
研究面では、統計解析について勉強できたことで、今後の研究の礎を築くことができた。
印象に残ったこと、学位研究のほかに行った研究や成し遂げたこと等
2020年度放射線総会で教育展示部門賞を受賞できたこと。これまで東大には多くの受賞者がいらっしゃるので、自分としてもホッとしています。
来年度の所属と抱負
大学に籍を残して大学院時代に発表した学会発表ネタを論文化します!