2021年度上半期論文ハイライト part2

投稿者: 前田恵理子 / 投稿日: 2021年07月11日
2021年4-6月に東大放射線科の医局員が筆頭著者となり、アクセプトされた論文からハイライトをご紹介いたします。第2弾は、初めて投稿した論文がMolecular and Clinical Oncology誌にアクセプトされた、放射線治療部門の陣内遥先生と、医科学研究所(診断)の菅原暖斗先生によるCTの2論文です。

陣内遥先生

東大放射線科大学院生 放射線治療部門 医師6年目

陣内先生2021年6月ハイライト

Jinnouchi H, Yamashita H, Kiritoshi T, Miki Y, Katano A, Nakagawa K, Abe O. Prognostic value of pre-treatment maximum standardized uptake value and CRP in radiotherapy of esophageal cancer. Mol Clin Oncol. 2021 Jul;15(1):146. doi: 10.3892/mco.2021.2308.

内容紹介

食道癌は一般的に予後不良の疾患です。この研究は化学放射線治療前のSUVmaxとCRPから予後を予測し、予後が悪い群に対してより強度の強い治療を提供することを目的としています。

ひとこと

初めての論文で何から何まで治療部門のトップの山下英臣先生に教えていただき、何とか出版に至りました。東大病院にはまだまだ論文の材料がたくさんあるので、これからも頑張ります。

菅原暖斗先生

医科学研究所放射線科特任助教 放射線科医8年目

菅原暖斗先生

Sugawara H, Watanabe H, Kunimatsu A, Abe O, Yatabe Y, Watanabe SI, Kusumoto M. Tumor size in patients with severe pulmonary emphysema might be underestimated on preoperative CT. Eur Radiol. 2021 Jun 16. doi: 10.1007/s00330-021-08105-3.

内容紹介

高度の肺気腫にできる腫瘍は形態がいびつになることが多く、腫瘍径をCTでとらえにくいのではないかということを検討した論文です。今回の検討では高度の肺気腫があった場合、腫瘍径が大きくなるほど、軸位断像のみでは実際の腫瘍径(病理標本上の径)に対して過小評価となる結果となりました。比較的小さめの腫瘍で背景肺がきれいな場合は、軸位断像のみの測定でも実際の腫瘍径に近くなりますが、肺気腫があり大き目の腫瘍の場合は、1方向だけでなく多方向(Multi Planar Reconstruction)でステージングした方がよさそうです。

Sugawara H, Yoshikawa T, Kunimatsu A, Akai H, Yasaka K, Abe O. Detectability of pancreatic lesions by low-dose unenhanced computed tomography using iterative reconstruction. Eur J Radiol. 2021 May 15;141:109776. doi: 10.1016/j.ejrad.2021.109776.

内容紹介

近年、逐次近似再構成法という技術により低線量CTの撮像が広く行われるようになってきました。胸部領域ではスクリーニングとしての意義が確立しているのですが、腹部領域の報告は少ないため、膵病変に絞って病変の検出率を検討しました。特に膵の嚢胞性病変に関しては低線量CTでの検出率は悪く、膵病変のスクリーニングとしては低線量単純CTはあまり向かないであろうとの結果になりました。

ひとこと

世界の総論文投稿数が増え続けているためか、耳にしたことがあるようなジャーナルは、じりじりと掲載のハードルが上がり、インパクトファクターがインフレしてきている気がします。ある程度早いうちからこつこつやっていくのが大事なのかなと思っており、頑張っていきたいところです。