日本医学放射線学会 令和4年度各賞受賞報告

投稿者: 中尾貴祐, 藤田翔平, 三木聡一郎 / 投稿日: 2023年06月30日
日本医学放射線学会より2022年度の各賞が発表されました。東大病院放射線科医局からは、中尾貴祐先生がJJR最優秀論文賞を、藤田翔平先生が関連ジャーナルの最優秀論文賞を受賞されました。

中尾貴祐先生

JJR優秀論文賞(核医学領域)

Nakao T, Hanaoka S, Nomura Y, Hayashi N, Abe O. Anomaly detection in chest 18F-FDG PET/CT by Bayesian deep learning. Jpn J Radiol. 2022 Jul;40(7):730-739. doi: 10.1007/s11604-022-01249-2.

内容紹介

提案手法による検出結果の例。提案手法は異常な集積のみを強調できており、心臓や肝などの生理的集積にはあまり反応しない。 左列: 元画像 (PET/CT fusion)、中央列: 提案手法によるZスコア画像、右列: Zスコアが3以上の領域 (a) 肺腫瘤、(b) 左肺門リンパ節、(c) 右乳房腫瘤

FDG PET/CT画像から異常集積を自動検出する研究です。PET/CTでは健常者においてもいわゆる生理的集積があり、その程度は部位によって異なります。ですので、たんに集積の強さ (SUV) を見るだけでは異常かどうかを判断できません。提案手法では、その生理的集積の程度やばらつきをDeep Learningモデルに学習・推定させ、そこからの外れ具合を計算します。外れ具合はZスコア、つまり平均から標準偏差 (SD) 何個分離れているかとして定量化できます。 この手法は、臓器を問わず任意の部位にある異常集積を検出できるのが売りです。さらに、健常者のPET/CT画像さえあれば学習できるので、学習データセットの作成に人手があまりかかりません。ふつう、病変を自動検出するモデルを作る際には、学習データとして「病変のある画像を大量に用意して、さらにその大量の病変の場所をひとつひとつ人手でマークして……」といった準備をしないといけないので大変なのですが、提案手法ではそういった作業が必要ありません。

ひとこと

このたびは賞をいただきまして大変光栄に思います。私の所属するコンピュータ画像診断学/予防医学講座では検診業務を行っており、健常者を含めたPET/CT画像が数多く蓄積されています。それが活かせるような研究となりました。

藤田翔平先生

第35回最優秀論文賞

Fujita S, Sano K, Cruz G, Fukumura Y, Kawasaki H, Fukunaga I, Morita Y, Yoneyama M, Kamagata K, Abe O, Ikejima K, Botnar RM, Prieto C, Aoki S. MR Fingerprinting for Liver Tissue Characterization: A Histopathologic Correlation Study. Radiology. 2023 Jan;306(1):150-159. doi: 10.1148/radiol.220736.

内容紹介

本研究手法は、肝臓の状態を定量的に示すT1値、T2値、T2*値、脂肪含有率を一度の息止めで同時に取得します。これにより肝組織の繊維化や炎症、脂肪沈着、鉄沈着の程度を客観的に把握するアプローチを確立し、肝生検代替としての可能性を示す第一歩となりました。

ひとこと

チームメンバーの皆様に心から感謝申し上げます。今後も研究を続け、放射線科学の発展に少しでも貢献できるよう努めてまいります。