教授ご挨拶

東京大学医学部附属病院 放射線科
大学院医学系研究科 放射線医学講座
教授 阿部 修

本学放射線医学講座は放射線診断学、放射線治療学、核医学の3部門から構成されています。各部門は診療・研究・教育の3分野において密接な関連を有し、各部門にはそれぞれのエキスパートを配する一方、若手スタッフは各部門横断的に3分野に従事しており、私自身もバランスのとれた診療・研究・医師育成を重視しております。

私は平成28年10月より当講座教授を拝命いたしました。従来より患者様および画像検査・放射線治療を御依頼頂く診療科の先生方の信頼を継続的に得るべく全スタッフ共々日々研鑽を積んでまいりました。放射線医学が対象とするべき疾患は非常に多岐にわたっており、実際に「頭のてっぺんからつま先まで」診断・治療に関与しています。各臓器における専門医の先生方の先端的な知識に勝るとも劣らず、ときに診断・治療が困難な患者様に対するサジェスチョンや、治療に伴う生活の質低下を回避可能な放射線科ならではの治療方法も提案可能であると考えています。

ここ四半世紀の画像診断・治療装置における発達はめざましく、以前は診断の困難であった小病変の早期検出・早期質的診断が可能となり、臓器によっては外科手術と同等な成績を有する放射線治療法も臨床応用されてきました。しかし撮影された画像に関する病的所見をくまなく拾い上げ治療に応用し、患者様ごとに最適な医療を提供することは今もって機械に任せることはできず、人間の英知が必要であることは以前と何ら変わりがありません。最新鋭装置の利点・欠点を熟知し、疑われている疾患に対する最適な画像診断法を選択し、生活の質を低下させないような治療法が実践できるのがわれわれ放射線科医であると自負しております。

また現時点で確立された最先端の医学に習熟するばかりでなく、次世代の診断法・治療法を開発することも大学に在籍する医師の使命であると考えています。コンピューター断層撮影装置や磁気共鳴装置(MRI)、ポジトロン断層法、超音波診断装置など各診断装置の性能は絶えず向上しているものの、これらの各装置が医療に活用されるようになって30-40年前後が経過した現在、それらと撮像原理の異なる新たな撮影技術は臨床上登場していません。またすべてを機械に任せた自動診断技術が確立されていないことは先にも述べましたが、一方で人間の視覚的診断の限界も実感しており、直ちに診療応用は困難ではあるものの、既存の診断画像に対してコンピューターを駆使した新たな補助的診断手法や、機能的MRIを含めた脳機能の研究にも従事しています。私自身は大学院生時代ラット脳梗塞モデルを用いた虚血イメージングにも従事しており、基礎研究に対する理解も浅くはありません。

縁の下の力持ち的な存在ではありますが、各臓器の診断・治療を横断的に行っている放射線医学の魅力や活力を多くの方々に知っていただき、それを実践できる放射線科医師が一人でも多く増えることを期待しています。


阿部修教授インタビュー記事(放射線科ブログ)